RESIDENCE – N 2021

築70年の木造平家建ての改修計画。
祖父母から住まわれてきた平屋を70歳になる施主夫婦が新たに移り住む。
そして、子供や孫の代へ受け継がれていくBATON HOUSE。
この住宅の変遷は少し複雑だ。施主の祖父母が約70年前にこの地に平屋を建てた。
家族の人数や生活スタイルに合わせて増改築を繰り返しながら時を重ねて叔母が1人で住んでいた。

約20年前に施主家族が新たに住む事になり木造2階建を平屋部分に繋げる形で増築された。
その後、子供が独立したのと、叔母が他界されたのを契機に平屋に施主夫婦2人で住む計画になった。

そして2階建の住宅は子供や孫世代に引き継ぐ予定である。改修計画を始めるにあたって、施主からの要望は建築としての安全性を確保をして

今後も住めるようにすること、大きな開口を設けて明るくすること、天井を高くすること、バリアフリーにすることであった。
元の間取りは台所、居間、3畳と6畳の間取りで小分けにされた空間だった。
夫婦2人で住む住宅なので出来るだけ広くリビングスペースを確保して、寝室を1つにするなどバリフリー観点からも極力シンプルな平面計画にした。
また、導線にも配慮しトイレを2箇所からアクセス出来るようにしたり、元の玄関は狭く使い勝手が悪かったので勝手口として残し、

メインの玄関はリビング側に設けた。
こうした打ち合わせを重ねていくに連れて最初からあった箇所がリビングとなり、増築された箇所が寝室やお風呂場などのスペースとなった。

そこで我々はこれまでの変遷(情報)を整理し、この住宅が築いてきた歴史を意匠として表現することを試みた。

具体的には、70年前に建てられた平屋の解体時に発生した柱や土壁などの古材を粉砕し、塗料に混ぜ込んだものをオールドマテリアルとし、

ニューマテリアルとして、ガルバリウムを使用した。
ガルバリウムが外部から内部に入り込み、オールドマテリアルの空間と繋がることで、過去と現代のマテリアルが共存し、

空間としての奥行きを生んだ。解体工事がはじまると増築や改修が想定していたものより数多く行われていることが分かった。
プランの修正や変更、追加など大小様々な発見や施主の想いも含めて1つ1つ吟味しながら残す箇所や建具を流用したりなど、

臨機応変に工事を進めていった。
都内では珍しく庭があり、植栽も重要な要素と捉えて改めてデザインし、夜には月見も出来るデッキスペースを設けた。

こういった築年数の古い改修は新築のように建て替えることは比較的簡単に可能だ。

ただ、今回のような施主のこれまでの想いや今後の願いを汲み取り進めていく為には、設計、施工、何よりも施主の力が無ければ実現出来なかったと思う。

工事が始まってから毎日現場を見届けて変わる姿を見守った御施主様を思うと感慨深いものを感じた。

住む人のライフスタイルやステージに合わせて増改築や住み替えを行いながら、平屋と2階建を行き来しながら住まい続けている。

単純な住替えや新たな土地へ移り住むという選択肢ではなく、

世代間を超え同じ土地で住み替えを行う新たな生活の在り方を一つ指し示す事が出来たのではないかと思う。

所在地: 東京都練馬区
築年: 1952年(築68年)|戸建改修
用途: 個人住宅
敷地面積: 328.88m²(99.48坪)
建築面積: 116.40m²(35.21坪) 
延床面積: 75.76m²(22.91坪) |工事対象箇所
構造: 木造
改修完了年: 2021年4月設計監理: AtMa inc./design toka
施工: Butter inc.
写真: Kenta Hasegawa